生前葬とは?~存命中にみんなへ感謝を伝える葬儀~
著名人やタレントが「生前葬を行った」というニュースを、耳にしたことはありますか?アントニオ猪木さんや、歌手の桑田佳祐さんが行った生前葬については、記憶に残っている方もいらっしゃるかも知れません。
生前葬とは、生きているうちに葬儀をすることです。この記事では、とくに「おひとりさまにとっての生前葬」に興味がある人のために、生前葬の目的や時期、メリットとデメリット、流れについて解説します。
生前葬とは、存命中に葬儀をすること
生前葬とは、存命中に葬儀をすることです。生前葬の目的は、主に以下の2つです。
お世話になった人たちに感謝の気持ちを伝える
生きているうちに葬儀を行うので、ご家族はもちろん、お世話になった人たちみんなに、自分の口から直接感謝の気持ちを伝えることができます。生前葬の多くは、これを目的に開催されます。
後の世代に葬儀の負担をかけないため、先に葬儀をしておく
「葬儀の負担を子世代ではなく自分に」と、生前葬を希望する人がいます。菩提寺から戒名をいただいて読経してもらい、多くの人を呼んで香典や香典返しのやりとりを済ませたりもします。
ただ実際には、生前葬をすることで後の負担をすっかり取り除くことはできません。火葬はしなければなりませんし、親族・友人などに亡くなったことを知らせる必要もあります。このような事情もあり、子世代に負担をかけないことを主目的として生前葬をする人は、ごく稀です。
とくに、子世代のいないおひとりさまにとっては、お世話になったみんなに感謝の気持ちを伝えることが生前葬の主な目的となるでしょう。また、自分が亡くなっても、親しい人たち全員に訃報が行き届くとは限りません。それを参加者に伝えておく意味でも、生前葬は有効です。
生前葬を行う時期
生前葬を行う時期は、人それぞれです。医師から余命を告げられたことをきっかけに検討する方もいれば、定年や誕生日といった人生の節目に開催する方もいます。
生前葬にふさわしい人生の節目として広く利用されているのが、古希(70歳)や喜寿(77歳)、米寿(88歳)といった長寿祝いのタイミングです。長寿祝いの一環であれば、「生前葬を行います」などと通知するとなんとなく縁起の悪さを感じたり、身構えてしまう人にも、気楽に参加してもらえる可能性が高くなります。
生前葬のメリットとデメリット
生前葬のメリットは、以下の3つです。
見送られる本人の希望通りに葬儀ができる
葬儀は主役となる本人が、当日の演出をプロデュースできます。また、スピーチをする相手を指名したり、余興について細かく希望を伝えたりすることで、オリジナルかつ希望通りの葬儀を叶えることができます。とくに死後の希望を託せる子世代がいないおひとりさまにとっては、最大のメリットといえるでしょう。
(第三者と死後事務委任契約を結ぶなど、自身の没後に葬儀に関する希望を叶えてもらう方法もあります)
会場が制限されない
通常、葬儀の場にはご遺体があるため、葬儀会場は専用の式場に制限されます。しかし、生前葬であればご遺体はありません。そのため、企画趣旨を理解してくれるところであれば、ホテルの宴会場やレストランといった場所でも生前葬は開催可能です。
費用の調節が可能
生前葬は招待制となりますから、葬儀の規模を正確に押さえた上で予算立てができます。香典を受け取る代わりに会費制とする方もいれば、会場費や食事代など必要経費の全てを主催者本人が負担する場合もあります。どちらにせよ自身の裁量で生前葬の規模なども調節でき、費用の調整も可能なため安心です。
一方、生前葬には、以下のようなデメリットもあります。
参列者が戸惑う可能性がある
生前葬はまだまだ一般的とはいえず、参加経験のある人が少ない葬儀です。服装や香典といった参列マナーや、当日の振る舞い方に戸惑いを覚える人も少なくありません。招待をする人の中には、マナーが分からないために「気が重い」と、参加を辞退してしまう人もいるかもしれません。
参加者の戸惑いを払拭するため、案内には「服装は平服で」「会費制○○円」などと明記するのがおすすめです。
家族や親族の理解が得られない場合がある
「生前葬は有名人が行うもの」「生きているうちに葬儀をするなんて縁起が悪い」といった理由で、ご家族やご親族の理解が得られない場合があります。
後の負担を完全になくすことはできない
前述したように、生きているうちに葬儀をしても、逝去後の負担を完全に取り除くことは不可能です。例え自分自身がどれほど「逝去後に改めて葬儀をする必要はない」と伝えていたとしても、残されたご家族が「生前葬とは別に葬儀を行いたい」と希望し、亡くなった後にも葬儀が行われることもあります。すると葬儀費用を節約できるどころか、2回支払うことになってしまいますので、むしろ費用面だけ見れば本来よりもかかってしまう結果となります。
ただ、おひとりさまであれば、「家族や親族の理解」や「残される人の負担」については、あまり考えなくても良いでしょう。ご家族の存在を気にすることなく終活できるおひとりさまは、生前葬に向いているといえます。
生前葬の流れ
生前葬の主な流れは、以下の通りです。
開式
司会者などが開式の辞を述べます。
本人挨拶
葬儀の主役である本人が、このたびの生前葬の趣旨や、集まってもらったことへの感謝の気持ちを示します。これは、逝去後の葬儀ではできない演出です。
本人の人生を振り返るムービー
写真のスライドや動画をスクリーン上に映し出し、本人の人生を幼少期から振り返ります。ナレーションは、司会者のほか、本人が行うこともあります。
友人のスピーチや余興
葬儀の「弔辞」のかわりに、ご友人がスピーチを行います。スピーチ内容は、本人との思い出話や、本人に伝えたい言葉などです。カラオケや楽器演奏などで余興を行う場合もあります。
歓談
会食を交えながら、歓談する時間をとるのが一般的です。本人は、各テーブルを回り挨拶をします。
閉式
1時間半から2時間ほどで、閉式となります。閉式の際にも、本人が参列への感謝を述べます。
理想の葬儀の手段として、生前葬について考えてみよう
生前葬は、存命中に葬儀の希望が叶えられるご葬儀です。もし、理想として思い描いている葬儀があるならば、思い切って生前葬を企画してみてはいかがでしょうか。とくにおひとりさまであれば、ご家族に遠慮することのない自由な演出で、みんなの心に残る生前葬ができるでしょう。
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(監修:行政書士・尾形達也)
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